なぜ人的資本の開示に注目が集まっているのか
こんにちは!HCプロデュースの土井です。
”人的資本への関心が高まっている”、今、当社がよくご質問を受けるポイントとして、その背景についてお伝えしたいと思います。
当社としては、大きく2つの背景があると考えております。
1つ目は、企業の無形資産の価値を把握したいという投資家ニーズが高まっていることです。
従来は、モノやカネに代表される有形資産が企業価値を計る上での主たる基準となっておりましたが、昨今は、産業のサービス化やデジタル化に伴い、人的資本、ブランド、ソフトウエア、特許といった無形資産が企業価値に占める割合が高くなってきています。
Aon社の無形資産に関するレポート「2019 Intangible Assets Financial Statement Impact Comparison Report」によると、米S&Pの500社においては、1975年には無形資産の企業価値に占める割合は17%であったのに対し、2018年には84%を占めていることが分かります。
無形資産=(イコール)人的資本ではないのですが、新たなビジネスを構想したり、新しいソフトウエアを開発したり、デジタリゼーションを推進したり、特許を生み出す技術を創るのは、全て「人」であることは疑いの余地が無いと思います。
例えば、先進国においては少子高齢化に伴い労働力人口が減少する一方、ITエンジニアといった新しい価値を創出する人材の獲得競争が起きています。また、活発化するM&Aを通じて、国や業界を超えた人材の移動も増えています。
このような中、「企業が、長期的に経済的便益をもたらす人材を採用し、育成し、適切に処遇できているか」という観点から、投資家が各企業における人的資本強化への取り組みを把握したいと考えるのは当然ですよね。
古くから「企業は人」といわれてきたことが、本当の意味で問われ始めた、とも言えるかと思います。
2つ目は、ESG:環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)といった観点から、サステイナブル(持続可能)な社会の創出に向けて責任ある行動を企業に求める動きが、世界的に強まっていることが挙げられます。
これらの非財務的な情報は、投資家においても、企業がより安定的かつ長期的な成長を実現する上で重要な指標と考えられるようになり、英語の頭文字から“ESG”と呼ばれ、昨今は日本でも急速に浸透しておりますね。
「人的資本」についても、このESGの中の「社会」の1項目に含まれるため、男女平等や人権、ダイバーシティといった点については、既にサステナビリティの観点から情報開示を進めている企業も多くなって参りました。
2021年1 月に開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)でも、61社がESG指標の情報開示にコミットし、ガバナンス、地球環境、持続的成長に加え、人(people)についても含まれることとなり、大きな注目を浴びたことは記憶に新しいですね。
上述した潮流から、人的資本と業績の間の相互関係・メカニズムを如何に見える化するかが必然的に各社の経営課題となっており、グローバル企業では経営者や人事部を中心に様々な施策が講じられている一方で、多くの日本企業においては、依然として人的資本が”社内向け限定の情報”と捉えられていると感じており、変革が迫られている状況と考えております。
HCプロデュース/土井